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COLUMN

これからの建築設計に求められるデザイン思考

今回のコラムでは、今年4月にデザイン設計事務所からRootageに加わったデザイナーの東が「これからの建築設計に求められるデザイン思考」について書きたいと思います。

生活の中にあらゆる情報が溢れている現代、そしてコロナ禍を経験して人々のライフスタイルにも多くの変化が表れた今、建築設計に求められるものも変わってきています。

まずは私、東の簡単な自己紹介。

大学の建築学科で建築を学び、卒業後すぐに建築設計事務所に入社した私は幼少のころからこの業界で働くことを夢見ていた少年でした。

熊本の田舎で育った私の実家は農家で、建築には縁もゆかりもなく親族に大工が居るわけでもありませんでした。しかし、物心ついたころには小学校で将来の夢を描く宿題で大工の画を描いていて、そのまま夢の職業に就き今もデザイナーをやっています。

そんな私が、前職で大型商業施設や旅館・ホテルといった宿泊施設などの設計・デザインに携わってきた経験から、これからの建築設計に求められるものについて考えてみました。

デザイン力は当然だが、より必要とされるのはヒアリング力。

前述した通り、私は建築設計に子供のころから憧れ、その夢を叶えてデザイナーとして働いていますが、自分自身を突出したセンスがある人間だとは一度も思ったことがありません。お客様を見てインスピレーションで設計やデザインを描き起こすことはもちろん、アーティストのように自分のデザインに偏ったものがあるわけではありません。そんな芸術家の類のデザイナーはごく稀ですが。

そのため、お客様から依頼をいただいたときに最も大切にしているのがヒアリングです。時代の変化が速いなかで、お客様が建築設計に求めるものも日進月歩で変わっていきます。オフィスであっても、飲食店であっても、金融機関であっても、お客様はこの建築に何を求めているのか?そしてこの建築でどんなビジネス・サービスを展開していくのか?ターゲットはどのような人なのか?...などなど、デザインを考える前にヒアリングによる十分な情報がなければ良い建築設計はできないというのが私の考えです。

お客様の要望と市場のニーズをどう捉え、掛け合わせるか。

ヒアリングから得た情報をもとに、最初はそのビジネスやサービスが提供されている市場の調査を行います。まずは類似業態から調査しますが、業態だけに囚われずにターゲットが近いビジネスやサービス単価が同様のビジネスにも調査対象を広げて情報収集します。この時に重要なのが、建築設計という箱だけを見るのではなく、サービスのソフト面にも注視することです。提案のヒントが隠れているのは必ずしも同業態とは限らないからです。

世に溢れる情報を常にキャッチアップし、いつでも引き出せる準備を怠りません。なぜなら、お客様も多くの情報を自ら得ることができるからです。私たちがやるべきは、その情報からお客様の要望を叶えるためにどう料理するかということです。

コロナ禍を経て、大きく変わった建築のトレンド。

コロナ禍だけが原因ではありませんが、建築におけるトレンドは大きく変化をしています。

まずは、AIやロボットの導入による無人化ニーズの高まり。皆さんも、受付にロボットが立つホテルや配膳ロボットが料理を運んでくるレストランを見られたことがあるのではないでしょうか。これは、国内における労働人材の減少と企業の人件費抑制の両方が引き金となっていると言えます。しかし、「AI化やロボット導入は建築とは関係ないじゃない?」と指摘する方もいるかもしれません。いいえ、大きく関係してくるんです。

例えば、無人化されたホテルではチェックイン・アウトに必要となる機能やスペースの広さ、セキュリティの考え方など必要な空間の構成が変わってきます。また、AIを導入したトレーニングジムでは、毎回30分のトレーニング内容をAIが決めてくれます。時間にロスがないため画一されたスケジュールで待ち時間なく集客できることに伴い、更衣室やサーキットの構成、客導線を効率よく設計する必要があります。これらテクノロジーを理解し、新しいサービスオペレーションを把握しなければ、建築設計のデザインには落とし込めないと言っても過言ではありません。

その他、飲食店や旅館、オフィスにおいてもコロナ禍を経たことで一つのトレンドが見えてきました。飲食店では特に、コロナ期間中に他人と接触しない環境に慣れてしまったため、コロナ後も個室やボックス席など他人との距離を保った空間に暫くは需要が傾くでしょうし、自宅で過ごすことが増えたことで、外出先で非日常感を求める人が増えることが予想されます。コロナによって基準が縮小されたパーソナルスペースを理解しつつ、限られた空間を如何に居心地よく、非日常的な特別な空間とできるかがポイントとなると考えます。さらに非日常が求められる旅館では、コロナ禍をきっかけに内湯付きの部屋の需要が爆発的に高まりました。興味深いことにその過程で、距離を隔てる目的以外にも、小さい子供連れの家族や身体の弱い高齢者など安心・安全性を重視した層からの需要もあることが顕在化されました。一方、オフィスにおいても在宅ワークの導入により働き方そのものの価値が変化しつつあります。中でも多く採用されている、置くだけのWEB会議BOXやフリーアドレスによるレイアウトのシンプル化は原状回復のコストも抑えることができ、成長速度の速い企業にも順応しています。

これだけではありませんがこのいくつかの事例をみても、時代の変化に伴い移り行く建築業界のトレンドと市場ニーズを常に捉えていくことは非常に大切なことだと気づかされます。

ヒアリングを最後にカタチにするのがデザイン。

建築もしかり、何においても多くの情報をお客様が得られるようになった現代では、お客様の目が肥えてきていることは逃れようもない事実です。

しかし、私たちRootageにこれから求められる建築設計とは、ただ美しいデザインをするだけではなく、どのようなビジネス・サービスを行うかによって必要なデザインを提案していくことだと痛感しています。例えば、働く人の力を120%引き出すオフィスデザインとか、看板料理を最高に美味しく味わうことができる店舗デザインなど、本質を突いたデザイン。

デザインとは建築だけではなく、サービスや商品、空間、人、全てに宿るもの。お客様が考えていることを全部ヒアリングして、それを最後にカタチにするのがデザインだと私たちは考えます。

これからより強力となったRootageのヒアリング力とデザイン力にご期待ください。

株式会社Rootage
デザイナー 東 幸貴

建築設計事務所にて大型物販店舗や旅館などの宿泊施設の設計監理に6年間従事。
2023年4月からRootageへデザイナーとしてジョイン。

これまでの経験を活かし、Rootageが得意とする金融機関やオフィスデザインだけでなく、幅広い業態のデザインを提案していく。
ビジネスやサービスにおけるデザインの重要性を強く認識しており、建築だけに留まらずロゴデザインやグラフィックデザインなど幅広く手掛ける。

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